産婦人科医のおじさんと泌尿器科医のモモ先生と看護学生のかすみちゃんのブログ

性教育に関するブログです。産婦人科の男性医師と泌尿器科の女性医師と看護学生の女の子がいろいろ話します。それぞれ筆者への質問は https://peing.net/kamishige0315 で受けます。

月に一回月経はなくていい???

月経(生理)は月に一回あるほうがいい、月経は体のバロメーターであるとかよく言われます。確かに月に一回月経があるということは、定期的に排卵が起きている、ホルモンも正常に分泌されているということになるので、女性ホルモンの働きが正常であって、現在また将来の妊娠能力に関しても安心できるということの証明です。

 

 月経というのは女性ホルモンの一種であるエストロゲンが子宮の中にある内膜に働きかけて膜を厚くします、そして月経開始から約2週間で排卵(卵巣から卵子が出る)が起きてそこで黄体ホルモンの分泌が始まります。この黄体ホルモンが子宮内膜を血管の豊富な状態に変化させて安定させてくれます。この黄体ホルモンは約2週間分泌されて消失してゆきます。黄体ホルモンがなくなると子宮の内膜は急に不安定になって血液と一緒に剥がれ落ちます。これが月経です。排卵まで2週間、排卵して黄体ホルモンが消失するまで2週間つまり合計4週間に一回月経が起きることになります。そしてまた新しい内膜が生成され妊娠しない限り同じことが繰り返されます。

 

 私たちは月経痛がひどい、PMSが辛いという患者さんに治療のためにホルモン剤を処方します。よく使うのがピルなのですが、ピルを使用している患者さんからよく生理がこないとか生理がきちんときていますとか言われるのですが、あれは正しくは生理ではありません。前に書いたように排卵してから起きるのが生理です。ピルにはエストロゲンと黄体ホルモンの2つのホルモンが1錠に入っています。この二つのホルモンの働きで排卵を止めています。そしてピルに入っているエストロゲン作用で、ある程度子宮の内膜は厚くなります。その厚くなった内膜はピルを休薬することで外に排出することができます。つまりピルには黄体ホルモンも入っているのでピルをやめるということは黄体ホルモンがストップするということ、つまり前に書いた月経が起きる時と同じことが起きていることになります。

f:id:kamishige:20190405134203j:plain

ピルは月経痛、PMS、月経不順、肌荒れなどに効果があります。もちろん避妊もです

 

 ピルを飲んでいる間に厚くなった内膜はピルを休むことで外に排出させます、これがピルの生理の正体です。一般に子宮の内膜はピルの作用で飲んでいない時よりは薄くなっています、なのでたまに休薬中に生理が起きないことがあります。子宮の中に排出されるべき内膜がまだ十分にできていないということなのでこの時は生理がなくても気にしなくて構いません。

 

 また月経痛やPMSがひどい場合は毎月生理を起こさないで数ヶ月に一回起こして月経痛やPMSの症状を楽にしてあげることが大切です。ピルで厚くなった内膜をどこで外に出すかという話なのでいつ出しても構わないわけです。ピルを飲むことで妊娠する能力に影響は出ないというデータがあります。ということはピルで月経間隔をいくら伸ばしても将来の妊娠には影響ないと言い切れます。

 

 子宮内膜症の治療薬に黄体ホルモン製剤があります。この薬を休みなくずーっと飲むことで子宮内膜は萎縮し、これが治療になります。そして考えてみたらわかることですが飲んでいる間、月経は来ません。この薬も将来の妊娠能力には影響はないと言われています。

 

 今、私たちは月経周期を自由にコントロールすることができます。今子供が欲しい人以外は月経が来ていい期間にだけ起こせばいいのです、それ以外は何ヶ月でも月経は止めていて構いません(ピルの場合、日本では一応120日まで止めることは認可されています)。素敵なことですよね。ピルは初潮開始後であれば使用可能です。

 

 月経をコントロールすることで楽しい学園生活、社会生活をすごしましょう。