産婦人科医のおじさんと泌尿器科医のモモ先生と看護学生のかすみちゃんのブログ

性教育に関するブログです。産婦人科の男性医師と泌尿器科の女性医師と看護学生の女の子がいろいろ話します。それぞれ筆者への質問は https://peing.net/kamishige0315 で受けます。

子宮頸がんワクチンについて簡単に!

 まず、かすみちゃんの質問ですがIとかIIとかの分類は古い形式の細胞診の分類で、今は子宮頚がんウィルス(HPV)感染の有無によるベセスダ分類を使うことが増えています。質問にあったIIは間違いなく異常無しなのですが、この表にあるようにⅢaとかⅢbなどはベセスダの広範囲に渡って認められます。日母分類は細胞の変化で分けていたので、トリコモナスなどの感染で細胞が変形した時もⅢに評価されてしまっていました。でも子宮頚がんはHPVの感染が原因ってわかってきたのでHPV感染の程度によって分類する方がより確実にリスクを確認できることになります、なので今はこのベセスダ分類に従って評価することが普通です。ただ昔ながらの集団検診などは新しい分類法になかなか馴染めなくて今だにⅠとかⅢとかで評価していますが、これはもう過去の分類だと言えます。

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日母分類とベセスダシステムの比較、だいたい下に行くほど悪くなります

 前回話しかけた子宮頚がんワクチンの話ですが、これはHPVウィルスを予防するワクチンの事です。ただし現在日本に入っているワクチンはHPV16、18型の2種類(尖型コンジローマの原因である6、11型も予防するタイプもありますがガンに関しては16、18型を予防するだけです)を予防できるもので計算上は子宮頚がんの7割を予防できるとされています。過去にワクチンを受けた人でなぜか子宮頚がんを100%予防できると思っている人がいますがそれは違います(多分医者がきちんと説明してなかったのが問題だと思います)。従って前回書いたようにワクチン接種者も子宮頚がん検診を受けないと確実に予防はできません。でもHPVに感染する確率、ガンに移行する確率は減るわけですから2年に1回のガン検診でも構わないと思います(ワクチンを受けてない人は毎年がん検診を受けましょう)。現在も日本ではこのワクチンは定期接種に定められています。各地方団体によって少しは違いますが一般に中学1年から高校1年までは無料で接種できます。3回打つのですが自費だと合計で5万円はかかるので定期接種の期間に接種しないと金銭的にも大変なことです。なのに学校や地方自治体はきちんと個別的に告知してくれません。

 実はこのワクチンですが副作用の報道があった為に日本では積極的に接種は勧めないという方針になっています。手足の震えや意識障害その他色々な副作用が訴えられています。世界の先進国はこのワクチンを積極的に定期接種することになっています。このことにより先進国の子宮頚がん発生頻度は下がってきています。オーストラリアなどは定期接種による子宮頚がん撲滅宣言をしています。世界がワクチンによる子宮頚がん撲滅を目指しているのに日本だけがワクチン接種に非協力的であると他の先進国から非難されているのが現状です。

 

 実際、ワクチンによる副作用を明らかにした論文はありません。科学的な立証はない状況で副作用の現実だけが動いています。色々なデータが発表される中、名古屋データと言われるものが有名です。これはワクチンを接種した女子とそれと同じ年齢層のワクチンを接種していない女性を比較した時に、前述したようなワクチンの副作用と言われる症状の発生はワクチンを接種したグループと接種していないグループとの間で差はなかった、いやむしろ接種していないグループにその症状は多く認められたというものです。

 つまりあの症状は痛い筋肉注射であるワクチンをうつ、SNSで痛すぎると話題になっているあのワクチンを接種するんだという精神的なストレスと、実際の筋肉注射の痛みからくる肉体的なストレスによって引き起こされたもので、薬剤が直接の原因ではないという結論です。

 でもワクチンを接種して起こる症状であることは事実です。少女たちにきちんとワクチンを接種することの目的、その仕組みを説明すると同時に起こり得る副作用についてもちゃんと話をした上で接種するしないは本人に決めてもらうようにする、急いで決めなくていいように中学1年生くらいから何年も余裕を持ってゆっくり考える時間を与える、実際接種する時も病院の控え室で十分に心の準備ができるまで待ってあげる、接種した後もゆっくり病院内で休んで大丈夫と思われるまでは帰らないようにする、接種後何か異変があった時には24時間体制で対応できる環境を整備しておき、そのことをきちんと伝えて精神的な不安を可能な限り取り去る、このような内容である程度副作用の発生を防ぐことが可能であると思います。

 ワクチン対象年齢の人またはその年齢でなくてもワクチンに興味がある人は気楽に婦人科に行ってください。そしてワクチンの説明を理解できるまで何度でも聞いて自分で判断してください。接種するしないはあなたの自由です。