産婦人科医のおじさんと泌尿器科医のモモ先生と看護学生のかすみちゃんのブログ

性教育に関するブログです。産婦人科の男性医師と泌尿器科の女性医師と看護学生の女の子がいろいろ話します。それぞれ筆者への質問は https://peing.net/kamishige0315 で受けます。

教えて!上村先生!~ミレーナについて~

お久しぶりです。モモです。

 

オンライン講座からずいぶん間が空いてしまいました。

 

子宮頸がんの会は、10人以上の方にご参加頂き、大変有意義な時間になりました。

 

小学校4年生の女の子も来てくれて、彼女の年代向けの講座もやりたいなと。

 

 

ただ、慌ただしく過ぎる日々に追われ、1ヶ月が経過してしまいました。

また上村先生と楽しい企画考えていくので、みなさんお楽しみに!

 

 

 

さて、最近Twitterを始めてみました(遅)

 

性教育関連の発信&フォローをメインでしていますが、

リアルでは全然存じ上げなかったけれど、とっても素敵な発信をされている性教育界の方々とつながることもでき、楽しいツールですね。

 

 

そんな中でちょっと気になっているのが、お題の「ミレーナ」のこと。

 

 

「ミレーナ最高!」「もっとたくさんの人に知ってほしい!」「私も入れてます!」

といったミレーナ礼賛ツイートを大学生や20代の若い女性が発信しているのを頻繁にみかけます。

 

 

ミレーナとは子宮内避妊具の一つで、ホルモン徐放作用もあるため

・避妊

・月経困難症の緩和

の効果があります。

 

一旦挿入してしまえば効果は持続的で最長5年ほど入れておくことができるとのこと。

コストパフォーマンスにも優れ、避妊効果も高い医療機器とされています。

 

 

 

私はピルユーザーですが、ミレーナについてはあまり関心がありませんでした。

というのも、20-30代前半で妊娠希望がある自分にとっては、対象外のものであるというイメージが強かったので。

 

 

それが、Twitter上では少なくない若年女性(プロフィール的に未婚、未経産が多い)が実際に使用したり、使用を勧めているので、驚いています。

 

 

 

医者をやってまだ数年ですが、

人体に人工物を挿入するというのは、対象がどの臓器であれ、常に感染リスクが伴うことは身に沁みています。

 

泌尿器科では尿道カテーテルを挿入する機会が多いですが、尿路感染症を起こす割合は非常に高くなります。

整形外科の人工骨頭置換術(人工の骨を挿入する)などはクリーンルームという、清潔にこだわる手術室の中でも、無菌にこだわり抜いた部屋で、宇宙服のような手術着に身を包んで手術が行われます。

 

異物を挿入=感染のリスク

は医師の常識だと思います。

 

 

実際に、私が研修医で救急外来での診察をしていた時、20代の女性が強い腹痛で受診しました。

CTを撮ると、骨盤内全体にかなりひどい炎症が。

そして膣には子宮内避妊具が挿入されていました。

 

彼女は即入院になりましたが、そのとき担当した産婦人科医が「若くて出産経験もないのに子宮内避妊具?」とくびをかしげていました。

 

 

ミレーナの使用文書のリスクに欄に骨盤内感染症は記載されています。

またそのことが不妊につながる可能性についても言及されています。

 

普通に考えて、生体内に異物を挿入することは感染のリスクを伴うことは紛れもない事実だと思うのです。

そして骨盤内の感染は将来的な不妊のリスクになることも事実でしょう。

 

子宮内避妊具の推奨対象者が経産婦(当面妊娠の希望がない人)なのは、そういったリスクを考えてのことなのではないでしょうか?

 

 

子宮内避妊具による骨盤炎症症候群(PID)の発症確率としては1%未満とのことなので、1000人に数人程度なのでしょう。

 

私が診た彼女は不運だっただけなのかもしれません。

 

 

ただ、実際に副作用(合併症)を目の当たりにした私は、若い今後妊娠希望が出てくる可能性のある女性に、容易に勧めることは怖くてできません。

 

 

もちろん、ピルが副作用や併存症(持病)で飲めなかったり、医学的に子宮内避妊具が妥当な方に関してはその選択肢は素晴らしいと思います。

 

 

ただ、

 

・ピルより安いよ!

・毎日飲まなくていいから楽だよ!

・副作用もたいしたことないよ!

 

といった理由で、リスクについての理解が乏しい状態で若い女性が使用することは避けるべきなのでは?

と感じています。

 

 

いくつかのレディースクリニックのホームページには

 

「未経産の女性でも使えますよ!」

 

と使用を積極的に勧めるような内容や、

感染のリスクについて説明がないようなところも散見されます。

 

 

 

女性が主体的に避妊をすることについて大賛成だし、

日本は避妊の選択肢が乏しい、性教育後進国であることは事実です。

 

質の高い性教育の義務教育化!を目指して私も日々取り組んでいます。

 

 

若い女性が積極的に避妊手段に関心を持ち、自ら調べ、発信することは素晴らしいことだと思います。

 

 

ただ、医療者でない個人ベースの成功体験が一般論として広まってしまうことや、scieceに基づかない信仰・宣伝は危険だとも感じています。

 

 

現代の中高大生はTwitterが情報源でしょう。

 

医療者がもっと正確な情報を発信していく必要を強く感じています。

 

 

私は産婦人科医ではありません。

 

が女性医師として、自分事としても、避妊については最新の正確な情報をもっていたい。

 

 

上村先生は子宮内避妊具(ミレーナ)の適応拡大(若年者、未経産女性)についてどうお考えですか?

感染のリスクや最新の情報についてもご意見うかがいたいです。