産婦人科医のおじさんと泌尿器科医のモモ先生と看護学生のかすみちゃんのブログ

性教育に関するブログです。産婦人科の男性医師と泌尿器科の女性医師と看護学生の女の子がいろいろ話します。それぞれ筆者への質問は https://peing.net/kamishige0315 で受けます。

ピエール瀧さんの事件で思うこと

こんにちは。モモです。

 

世間の「熱しやすさ冷めやすさ」が加速しているように感じます。

 

1週間前はあれほど大騒ぎしていたのに、

もうすっかり聞かなくなりました。

 

今回お話ししたいテーマは、

 

「罰」

 

です。

 

ピエールさんの場合、数多くの映画やドラマへの出演作品があり、

それらの扱いにも注目が集まりました。

 

徹底的にピエールさんの出演部分をカットしたり、

作品自体をお蔵入りにさせたりという

「毅然とした」方針を示す会社もあれば、

あえてそのまま流す方針を示す会社もあり議論となりました。

 

ワイドショーでコメンテータや司会者が

「薬物を使った時の見せしめの意味でも、厳しくすべき」

「もっともっと厳罰化することが必要でしょう」

というコメントを出していました。

 

この「厳罰化」の意見。

未成年の犯罪や悪質な悲惨な交通事故の時にもよく出ます。

 

何かの行動を推奨したい、もしくは抑止したい時、

「罰を与える」というのは一つの大きな手段です。

 

飲酒運転やシートベルト着用などは、

違反時の厳罰化によりある程度成果が出たと言われています。

 

が、悲惨な飲酒運転による事故や

シートベルトさえしていれば助かった犠牲者は

絶えることなく続いています。

 

厳罰化されたからこそ

「バレたらヤバい」

と逃走してさらなる被害を生むこともあります。

 

 

性教育に絡めて考えてみましょう。

 

 

「望まぬ妊娠を防ぎたい」

というテーマについて語るとき、

 

「中絶は、膣の中にこんな器具を入れて、中の赤ちゃんを掻き出すんだよ」

「中絶するということは人殺しと一緒だよ」

「痛いよ」「辛いよ」

 

と教える方法があります。

 

確かに、

「こんな風になったら嫌だから、自分で育てられる環境になるまでセックスしない」

と思う子もいるでしょう。その子にとってこの方法は成功です。

 

 

しかし、

「妊娠したかもしれない・・・」

と悩んでいる子にとっては、

これらの言葉は周囲への相談・産婦人科の受診をためらわせ、

さらなる状況の悪化を招きかねません。

 

やむを得ず中絶を経験した子には、

「私は人殺し・・・」

という罪悪感・トラウマを背負わせることになります。

 

 

性感染症予防」

というテーマについて語るとき、

 

エイズになったら早く死んじゃうよ」

 

と教えるとします。(注:これは間違った知識です)

それはエイズ患者やHIV感染者への排除や偏見につながり、

「自分とは関係ない」

と他人事として目をそらさせてしまうかもしれません。

 

 

 

さて、話を戻して・・・

ピエールさんは、

「まさかこんなことになるとは思わなかった」

「こんなことになるなら薬物なんてやらなかった」

のでしょうか?

 

 

きっと、

「いけないと分かっていた。バレたらたくさんの人を悲しませるし、今の生活を失うと分かっていた。」

と思うのです。

それでも止められなかった。

ピエール瀧さんほどの社会的成功者でも。

 

 

それがなぜなのか。どうすれば良かったのか。

そこを掘り下げていくことが必要なのに、メディアではセンセーショナルなポイントのみ大きく報じ、すぐに忘れていく。

そして結局また同じことの繰り返し。

 

 

薬物、虐待、性犯罪・・・世間にあふれる数々の社会問題。

解決策として「厳罰化」は万能ではない。

むしろそれほど効果がない場合や、

逆効果となっていることも多いのではないかと思っています。

 

 

罰を強くし、社会から排除することで

「なかったことにする」

「臭いものには蓋をする」

のではなく、

状況次第では誰にでも起こりうる問題として

「自分事」

として、その根本的な解決策(社会的支援やサポートなど)を考えていく必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

 

あと、望まぬ妊娠について。

極論な持論かもですが、

 

望まぬ妊娠をしたとしても、

 

中絶を選んでも、出産を選んでも、

 

偏見や経済的な負担を受けることなく

母子ともに幸せな人生を歩んでいける。

そんな社会になればいいですよね。

 

若すぎる妊娠は母体への負担やリスクが大きいので、その点はしっかり教育し避ける必要があるでしょうが。。

→上村先生、何か訂正あればお願いします。

 

 

 さてさて、なんだか長くて真面目な感じの内容になりましたが、

そろそろまとめます。

 

「薬物」「性」

など、子どもたちにかかわって欲しくない・・・!

という大人の願いから、これまで避ける、隠されてきた事柄たち。

 

が、むしろこれからは、こういったテーマについて子どもたちが主体的に疑問を持ち、悩みがあれば話せる場を作っていくことが大切ですよね。

 

 そういった場づくりについて、経験談やご意見、アドバイスいただける方がいらっしゃればぜひお願いします!

 

それではまた(^^)