産婦人科医のおじさんと泌尿器科医のモモ先生と看護学生のかすみちゃんのブログ

性教育に関するブログです。産婦人科の男性医師と泌尿器科の女性医師と看護学生の女の子がいろいろ話します。それぞれ筆者への質問は https://peing.net/kamishige0315 で受けます。

三浦春馬さんのこと

少し時間が経ちましたが、

私の思ったことをつらつら書いた文を公開します

 

「死」「自殺」というワードが複数回出てきます

人の死に関する描写が複数回出てきます

 

メンタルの調子が悪い人は読まないでください

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その日はジムでウォーキングマシンで歩きながらなんとなくNHKを流していた。

 

速報で「三浦春馬さん(30)死亡 自殺の可能性」という内容が目に飛び込んできて、一瞬現実のこととは思えなかった。

 

実際私は彼のファンという訳でもなく、普段からエンタメ業界にそれほど関心はない。

(少し前に世間を騒がせた手越祐也を知らなかった)

それでも「永遠の0」など私が観て印象的だった映画に出演していたり、とにかく「スキャンダルもなく順風満帆な俳優」という印象。

自殺という行為とはどうにもあまりにかけ離れている気がして、そしてまた年齢が同じことなどもあり、あれからずっと三浦さんのことを考えている。

 

 

私は高校生の時に同級生の自殺を経験した。

彼女とは一度同じクラスになったことがあり、当時私が憧れていた先輩の連絡先を彼女の姉伝いでgetしてくれて、ニヤニヤした顔文字と共にアドレスを送ってくれた。

プライベートで一緒に遊ぶというほどではないけれど、クラスが離れても会えば軽く話すような関係。

そんな彼女がある日突然亡くなったとホームルームで聞かされて、とにかく驚いた。

 

だって「自殺」に対して抱く当時の私のイメージとは最もかけ離れたといっていいような存在だったから。

 

他のクラスから男子が見にくるような綺麗な容姿、スポーツもできて、話も面白いから男女問わず人気があった。

 

成績もよくて、一体何に悩むことがあるんだろう?って傍から見たら思うような存在。

 

 

亡くなる1週間くらい前に図書室で自習してたら、彼女が同じ机に座って、そのとき「おはよ」って挨拶したけど、後からどれだけ考えても「異変」なんてものには気付きようがなかったと思うし、仮に「なんか元気ない?」と思ったとしても、「自殺考えてる?」なんて想像することは不可能だったと思う。

 

彼女の死に対して「どうして気付けなかったのか」「なぜ相談してくれなかったのか」という感情を持つほど私たちの関係は近くなかったけど、「彼女のような人が自殺するんだ」という衝撃はとても大きかった。

 

 

その後も大学生の時に留年を繰り返していてあまり面識のなかった同級生が自殺したと人伝に聞いた。ただ、顔も知らなくて、「留年しんどかったんかな?何も死なんくてもいいのに」と思ったくらい。

周囲では彼の死に関する話題がネタのように消費されて、「みんな、そんな風なんだ」とちょっと寒々しい気持ちになった。

 

 

医者になってから、自殺に出会うことは珍しくなくなった。

 

研修医で最初に出会った自殺の患者さんは若い男性で自宅で頸を吊った状態で搬送された。到着時にはすでに亡くなっていたが、搬送時、彼の靴下が左右全然違うものを履いていたのが妙に印象に残った。

 

救急車で現場まで行く機会もあり、高級マンションのベランダで頚を吊って亡くなっていた若い女性にも出会った。その豪華な部屋との対比がとても不思議に感じた。

 

他にも年齢、性別、方法は様々だが医者として出会った自殺患者は少なくない。

 

私は専門家ではないのであくまで個人的な意見だが、自殺する患者は大きく

 

・すでに精神疾患など自殺のリスクを把握されている

・何も予兆がなく、家族や周囲もわけがわからない

 

の2パターンに分けられる気がする。

 

後者の場合には、本当に突発的で、

 

 

「買い物に行く前に普段通りだったのに、帰ってきたら頚を吊っていた」

「直前まで普通に会話していた」

 

というようなことを家族や周囲の人は言っていた。

 

 

 

私の知人は過去に過労で自殺しかけた経験があるが、彼とこの話をしていた時に

 

 

当時の自分は「死ぬか生きるか」では悩んでいなくて、「死ぬ」っていう結論はもう決めていて、あとはどういう方法でっていう具体的なことを考えていいただけだから、

「悩んで」はいないので、その最中にも周りの人に対しては普段通り笑って冗談言ったりできるし、言葉上での未来の約束も普通にできるんだよね。

 

 

と言っていた。

 

 

 

何が言いたいのかと言うと、

 

「周りが自殺の予兆に気付き未然に防止する」

 

というのは極めて難しいということ。

 

 

 

そしてその難しさに、対応できる仕組みもほとんどないということ。

 

 

 

少し話しが逸れるが、

三浦さんの報道がされてから、特にネット記事では最後に必ず「いのちの電話」「相談窓口」の連絡先が添えられている。

 

 

 

 

 

 

 

私は「いのちの電話」に電話したことはないが、「妊娠相談電話」には電話をかけたことがある。

 

妊娠中に自分では感情をコントロールできなくなってしまい、どうしたらいいか分からず、とても辛い状態に陥った。

 

「こんなことで電話していいんだろうか」「私よりももっと緊急性が高い人が使う電話なのではなかろうか」と悶々と悩んだ末に、思い切って市が行っている妊娠関連の相談窓口に電話をかけてみた。

 

「自分でも理由が分からないのにとてもイライラしてしまって」

「イライラすることで胎児に悪影響があるかもしれないと考えるととても辛いです」

「仕事をやめた方がいいのでしょうか」

 

といったようなことを相談したが、結果的には

「もう少し様子をみてはどうでしょう」

と言われて終わり。

 

 

確かに、私の相談内容に「死」や「母体・胎児の危険」を感じさせる内容や緊急性は感じられなかっただろう。

緊急性の高い内容であればまた違った対応であったかもしれない。

 

ただ、話の内容だけで「緊急性のある・なし」「次に繋ぐ必要のある・なし」を判断するのってとても難しいのではないだろうか。

 

 

電話はお互い相手の表情も見えないし、お互いの背景、価値観、どの程度信用できるのかも一切分からない。

 

 

そんな中でどれだけの人が自分の辛さや死への距離をを言語化して相手に伝えることができるのだろうか。

 

 

自分の死への距離感。

 

 

 

「死」という選択肢が浮かぶまでの距離感

その選択肢が浮かんでから実行するまでの距離感

 

 

「私、このままだと自殺すると思います」

 

 

と自覚している人ってどの程度いるのだろうか。

 

 

 

電話相談も

 

「自分が使ってよい回線なのか」

「長時間話してはいけないのではないだろうか」

 

と考えて利用をためらってしまう人も少なくないのではなかろうか。

 

 

 

 

いのちの電話

 

 

 

ボランティアの善意によって支えられる素晴らしいシステムで、必要な仕組みだと思う

 

 

 

だけど、

 

 

辛い人に向けた一番の選択肢として公共的に出てくるのが

 

 

「プロではない無償ボランティアへの電話相談」

 

 

って、あまりにこころもとないと思うのは私だけ?

 

 

 

あと、人の辛い相談を聞くのってめちゃめちゃ負担が大きい。

 

 

無償のボランティアじゃなくて、

 

ちゃんと対価を支払うべきだと思う。

 

 

 

 

あと、三浦さんの件で思うのは、

素人考えだけど

 

俳優ってすごく負担の大きい仕事だと思う

 

 

 

労働基準法の適用を!なんていう感じのお仕事じゃないし、

 

 

「誰かの役になりきる」「喜怒哀楽を自分事のように演じる」

って素人が思う以上にメンタルへの負荷もかかるんじゃなかろうか。

 

 

 

そのあたりのケアってどの程度の仕組みとしてサポートされているの?

 

 

 

一般人と比べものにならないくらい誹謗中傷のリスクも高くて、

 

普段から手厚いケアが必要だと思うんだけど、そのあたりの現状どうなってるんだろうって思った。

 

メディアはそういうことにも目をむけて。

 

 

三浦さんの自殺の理由をさぐるんじゃなくて、

誰でも

 

どんな種類の悩みであったとしても、

 

たとえ周りからみたらありふれた、たいしたことないと思うような内容であったとしても、

 

 

もっと大切に拾って一緒に考えられる仕組みをどうしたら作れるのか

 

 

みんなが考えられるような報道をしてくれ。

 

 

 

「こいつメンタルやばそうだ」

って思ってから介入する

 

 

「この人様子がおかしいぞ」

って人が自殺リスクあると思い込む

 

 

それじゃ防げない。

 

 

「なんであの人が?」

「全然そんな様子なかった」

 

 

 

「自殺しそうな人」

 

固定観念に縛られた報道をするのはやめて

 

 

様子がおかしくない段階で、

 

世間話程度の話からいつでもできる環境を整える

人の辛い話を受け止める職業をもっと大切に扱って。

 

 

 

色々思うことをまとまりなく書きました。

 

 

 

この記事を書いたのは1週間前なんだけど、

その間にALS患者を死なせた医師のニュースがあった

 

 

「自分の死ぬタイミングを決めることは悪なのか?」

 

 

これについてもまた後日思うことを書きたいと思う。